一皿ごとに演者が変わる夜 — バリ島NXT体験記③
庭という“前奏曲”を楽しみ、再びメインダイニングへ戻った。 (前回はこちら →庭は料理の前奏曲 — バリ島NXT体験記② ) 今回は、そのテーブルで起きていたことについて。料理だけではなく、 “人”がどのように設計されていたのかを、書いてみたい。 庭から戻り、再びメインダイニングへ来てからが本番。 テーブルはとても広く、対面ではなく二人並んで座るスタイル。 ラウンジの空間には客ごとにたっぷり距離をとった位置にテーブルが配置されている。 それぞれが独立していて、当然、隣の会話が耳に入ることも、視線が交わることもない。 客席とは対照的に、料理人やホールスタッフたちはアイランドスタイルのキッチンで準備を進めている。 あまりに広いその空間は、まるで舞台のようで、スタッフたちが生き生きと動いている。 活気があり、和気あいあいだったり、チーフがまとめている様子、指示する風景もわかり、 眺めているだけで楽しい。 この店の主役は、料理だけではないのだと気づく。 料理が運ばれ、説明をするのはそれぞれの担当スタッフ。

食材、調理の意図、味わいの順番が丁寧に語られる。 言葉は滑らかで、暗記の響きがない。 目の前の客に楽しんでもらおうと、言葉を尽くす。 その姿勢から、仕事への自信と確信が伝わってくる。 メインは魚と肉。

⚫️バリ牛の肉は、焼きバナナの葉っぱ添えと煮込み それぞれに複雑なソースが添えられ、とても自分では再現できっこない。 白身魚は、ココナッツカレーのソースと。

⚫️カレーソースの色味 ロブスターの蒸し焼きは、素麺と合わせていただく料理として出てきた。 つけ麺のソースは、なんとドリアン出汁。 全然臭みはない。コクがすごかった。 それぞれ料理に合わせたお酒も、ソムリエが説明してくれる。 ワインだけじゃなく、レストランで発酵させた麹で作ったお酒も出された。 日本酒とトロロ昆布が合わさったようなアルコールはスッキリするする喉を滑っていった。 そしてお茶にも考えが尽くされていた。

世界的に抹茶が人気の今、ここではパンダンリーフの粉を点ててくれた。 茶筅を素早い手つきで扱い、差し出される一杯は、苦味がなく、すっきりと喉を通る。 最後はデザート担当の彼が、にこやかに説明してくれた“フルーツのプレート。 何なんだ、この笑顔は・・・料理だけでなく、プレゼンテーションに感心する。

まるで一皿ごとに演者が変わる舞台のようだった。 これだけの人数を配置できること自体、簡単ではない。 人件費をかけられる体制がある。 でも印象的だったのは、人数の多さではなく、その質。 誰もが自信を持っていて、押しつけがましくもない。 説明は自分の言葉でされていて、過剰ではなく、 目線は低く、声のトーンは柔らかい。 客に委ねる余白がある。 そして驚いたのは、スタッフ同士が常にテーブルの進行を確認していること。 遠くからのアイコンタクト。 視線だけで合図が交わされる。 二度ほど、「このペースで次のお料理をお出ししてもよろしいですか」と確認された。 急かさない。でも、待たせない。 客のペースにとことん寄り添う。 アラカルトではなく、コース料理だからこそ可能な設計なのだろうけど、 時間そのものが、料理の一部として管理されている。 それにしても、レストランの進化って、何だろう。 味覚の革新だけではない。 一つのテーブルに留まらせない、アトラクションのような演出。 サーブする人の動き、声の温度、間の取り方まで含めた総合的な成熟なのかもしれない。 それにしても英語がもっと自在に話せたなら、きっと深い質問もできたのにねぇ。 彼らの背景や誇りを、もっと聞きたかった。 でも言葉が足りなくても伝わるものは十分ありました。 サービスとは、料理の補助ではない。 それ自体が、もう一つの料理! 大満足の3時間コースでした。 *今回訪れたのは、バリ島・ウブドにある「NXT」。 ちなみに公式は https://locavorenxt.com 移住生活ランキング
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