トラクターで迎えに行く結婚式
ベトナムで暮らし始めて数年。 数えてみれば、もう20回以上は結婚式に出席している。 巨大な披露宴会場、何度も繰り返される乾杯、大音量のカラオケ。 ベトナムらしい盛大な結婚式にはすっかり慣れたつもりでした。 それでも今回、初めて見る景色にまた出会えた。 夫の会社で長く働くスタッフさんの結婚式へ。 家族ぐるみのお付きあいみたいなもの、私たちにとっても本当にうれしい一日。 この機会に、夫婦で念願のアオザイを仕立てました。 式はダラット近郊。 前日の夕方、寝台バスで約6時間。 カーテンで仕切られたコンパクトなフラットシートに寝転びながら向かいます。

到着すると、すでに前夜祭が始まっていました。 親戚も友人も集まり、乾杯、乾杯、また乾杯。 そしてカラオケ大会。 「結婚式は前日から盛り上がる!」 ベトナムの慣わしを感じながら、翌日の本番を迎えます。 翌朝、新郎は仕立てたスーツに身を包み、現れました。 そして手には、新婦を迎えるアイテムを持って。

赤い傘と花束、そして、花を散らし飾ったノンラー(傘)。 この季節、暑くて紫外線から守るのにはノンラーが一番。 ただ花嫁ように、とっても可愛らしく飾られていました。

そして、ここから花嫁を迎えに向かうのですが…… その乗り物を見て、思わず驚いた! なんと、トラクター。

荷台には会社のスタッフや友人たちが乗り込み、出発です。 スピーカーまで積み込んで、音楽は爆音。 花嫁の家までおよそ20分くらいの道のり。

ビデオ、写真をとりあい、歌い、笑い、揺られながら、 みんなで落ちないよう支え合って進んでいきます。 道端の人も手を振り、笑顔を返してくれる。 今、ここには幸せの時間しか流れていない。邪気ゼロ! 花嫁の家に着くと、家族が出迎え、花嫁が姿を現します。

真っ赤なアオザイに身を包み、少し照れたような笑顔。 とっても美しく、ノンラーもお似合い。

花嫁をトラクターに乗せて出発すると 親族を乗せたバスも後ろに続きます。 小さな車列になって町を走り、結婚式会場へ。 まるで町全体に、 「今日は、おめでたい日ですよ。」 と知らせているようでした。

その様子を見ながら、ふと、昔の日本も、 こんな風景があったのではないかと思い出しました。 花嫁が実家を出る日。 近所の人が集まり、お祝いをし、親戚が見送り、 地域のみんなで新しい門出を祝う。 結婚は家族だけのものではなく、地域全体のお祝い。 今では、その風景はほとんど見られなくなりました。 もちろん、日本の結婚式には日本らしい美しさがあります。 洗練され、丁寧で、細やかな心配りに満ちています。 でも、ベトナムの地方には、 もう少しだけ「村のお祭り」のような温かさが残っています。 誰か一人の幸せを、自分のことのように喜ぶ人たち。 その笑顔が本当にまぶしかった。 トラクターの荷台で風を受けながら、 みんなが笑っていて、祝福してて、平和の真っ只中にいた。 大人たちが本気で歌って、本気で笑って、誰かの幸せを全力で祝う。 おめでとう、Hさん、Tさん! ベトナムの結婚式には数多く出席していますが、 今回ほど心に残った式はありません。 失われつつある日本の結婚式の原風景を、 私はベトナムの田舎町で見つけたような気がしました。 移住生活ランキング
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