なくなる前にもう一度 〜スモモとネクタリンのコンポート〜
ホーチミンで暮らしていると、季節がないと言われる。 確かに一年中暑いし、半袖で過ごせる。 けれど市場へ通っていると、それは少し違う気がしてくる。 毎朝同じように並んでいるようで、売り場の景色は少しずつ変わる。 山積みだった果物が減り、別の果物が幅をきかせ、 八百屋のおばちゃんのおすすめも変わってくる。 市場にはちゃんと季節があって、 雨季の始まりになると、

北部からスモモとネクタリンが届く。

まあるいそのフォルムとカラーに、見つけると、つい足が止まっちゃう。 真紅のスモモ。 マンゴー黄色づいた、形は桃のネクタリン。 しかも、値段が手頃で、今回買ったのは、 スモモが1kg 60000VNDドン、ネクタリンが1kg 70000VND。 日本円にすると500円以下。 袋いっぱいに詰めても、財布はそれほど痛まない。 袋詰めにして持ち帰り、今年はパウンドケーキに焼いた。

アーモンドプードルをたっぷり使ったタルトにもした。

ベトナム人の友人にお裾分けしたら、とても喜んでくれた。

果物は食べればなくなる。 けれど不思議なことに、なくなる頃になるともう一度買いたくなる。 たぶん食べたいのではない。 季節が終わってほしくないのだ。 市場へ行くたび、並んでいる量が少しずつ減っているのが分かる。 もう終わりかな。 まだあるかな。 そんなことを考えながら売り場をのぞく。 ということで、そろそろ 今年最後かもしれないので、コンポートにて作り置きしておこう。 果物を刻り、砂糖をまぶす。 しばらくすると果実から透明な水分が上がってくる。 鍋に移して火にかける。 部屋に広がる甘い香り。 それだけで十分幸せな気分になるやつ。 ベトナムのカフェでは、quả đào…桃、のトッピングをよく見かける。 アイスティーに、ウーロン茶に、ジャスミン茶に・・・ ホイップの上にもちょこんと乗ったりしてる。 住み始めた頃から不思議だった。 桃の産地という印象はないし、 日本のような桃もあまり見かけない。 ましてや、桃の缶詰も見たことない。 それなのに、なぜかメニューの最初の方には 桃(đào) がある。 市場へ通ううち、その答えが少し見えてきた。 季節の果物を、そのまま食べるだけではなく加工して楽しん出るのでは? コンポートにしたり、シロップにしたり。 そんな暮らしの知恵が、この国には自然に根付いているのかもしれない。 出来上がったコンポートをヨーグルトにかける。 保存瓶の中には、果物だけではなく 季節も閉じ込められているような気がする。 市場で見つけた短い旬。 もうすぐ売り場から姿を消すだろう。 だからもう一度だけ作ろうと思う。

次はスモモを少し多めに。 今年いちばんおいしいコンポートにしよ。 移住生活ランキング
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