街の呼吸、朝の道──人がいて、会話が風景になる
ノスタルジックに浸るつもりはないのだけれど、 ベトナムにいると、 「ああ、あの頃の風景に少し似ているな」と思うことがある。 それは、懐かしさというより、 記憶のどこかを軽くノックされる感じに近い。

市場や商店街とは違う、いわゆる普通の道端も、朝になるとお店になる。 毎朝通る道の角っこには、ノンラー姿のおばちゃんが果物を売っている。 品数は多くはないけれど、 日本でいうと柿、ザボン、リンゴ、ブドウ、 それに東南アジアのフルーツ、ジャックフルーツなどが並ぶ。 かごにクッションシートを広げて置いただけの陳列だけれど、 ちゃんとお客さんが来る。 挨拶し合って、笑いながら喋っている。 他愛もない会話だろうけれど、 こうして社会とのつながりが、確かにそこに存在している。 忙しい市場の中でも、 朝のピークを過ぎると、 途端に自分たちの「楽しみの時間」を見つけるのか、 ベトナム版の将棋を打つ男性たちの姿がある。

自分が参加したいわけじゃないけれど、 こういう楽しそうで、のんびりした景色の中を歩いていると、 なんだか幸せな気持ちになる。 「ちょっと、将棋なんかしてないでこの商品包んでよ」とか、 「これいくらなの? ちゃんと仕事してよ〜」 なんて空気は、ここにはない。 どっちが強いのかな。いい勝負しているのかな。 どんな会話をしているんだろう。 言葉はわからなくても、 そこには、澱みない空気が流れている感じ、 多幸感あふれるエナジー、とでも言えばいいのか。違うか・・・ 団地の前の道では、 朝になると屋台の豆腐デザート屋さんがやってくる。 あったかいユル豆腐。東南アジアにある豆花(トォファ)ですね。 すぐ前に喫茶店があるのだけれど、そのお客さんから注文も入る。 喫茶店の中で店内以外の飲食を食べるのは、ベトナムではOK(最近は違うとこもあるけど) おおらかなルールがある。 お互いに助け合ってるんですよ、繁盛し合えばいい。 屋台の小さな椅子に腰掛けて世間話をする人が、ぽつぽつと集まってくる。 そこへ、寝起きのまま自転車に乗った女性が、 ふらりと惹きつけられて、豆腐デザートを買っていく。

特別な場所ではない。 けれど、雑談ができて、 鼻歌を歌うみたいに人が集う場所が、 あちこちに、自然と存在している。 移住生活ランキング
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