祝日が少ない国の、爆発する年末休暇 ――ホーチミン、テト前の“わさわさ”
ベトナムに来て、何回目の年末だろう。 数えてみればもう何度かこの季節を過ごしているのに、 正直に言うと、日本の大晦日みたいな「12月31日が来たぞ!」という身体の反応は、 まだ完全には染みついていない。 というのも、ここベトナムの暦の主役は旧暦だから。 年末年始の本番は、私たちが「旧正月」と呼ぶテト(Tết)のこと。 連休も毎年ずれるし、日本のように“新年が固定された儀式”として定着しているわけでもないから なんとなく「わかったようで、まだ掴みきれていない」感覚がずっとある。 でも最近、テト前後の街の様子がだんだん身体に入ってきた気がする。 カレンダーより先に、街の空気が教えてくれる。 「あ、今年も年末が来るな」と。 町全体が少しそわそわして、忙しそうで、でも楽しそう! 道にはお歳暮バイクが行き交う。 ギフトセットを積んだバイク、盆栽を運ぶバイク、花を抱えたバイク。 日本のお歳暮が梱包された宅配便なら、 ベトナムの剥き出しのお歳暮が“そのまま走っている”。

⚫️柑橘系の実がたわわな盆栽、桃の花の盆栽がいく〜 市場に行けば、花が一気に増える。 正月飾り用の果物も山積みで、スイカや柑橘がまぶしいくらい並ぶ。 それだけで「年が変わる準備」が見えてくる。 そして帰省するバイクたち。 大きな荷物をくくりつけて、家族のもとへ向かう人たち。 都市がふっと空っぽになっていく感じがある。

⚫️テトギフトを抱えて実家へ! 2026年は、1月16日が旧暦でいう大晦日で、17日が新年。 正式にテト休暇に入ったホーチミンは、驚くほど静かだ。 あんなに渋滞していた町が、すっと落ち着く。 まるで嵐の前後みたいに。 その一方で、市場は朝から大賑わいだった。 静かな町の中で、台所だけが忙しく動いている。 年末年始って、こういうものだったっけ。 団地の入口では、おばちゃんたちが集まってバインチュン作りが始まった。


バインチュン(Bánh chưng)は、テトに欠かせない伝統料理で、 もち米と緑豆、豚肉を葉で包んだ四角い餅のようなもの。 北部発祥で、伝説では「大地を象徴する供物」とも言われている。 【参考にしたサイト】 ・ベトナム観光局:テト文化の紹介 https://vietnam.travel/things-to-do/vietnamese-tet-holiday ・バインチュンの由来(英語) https://en.wikipedia.org/wiki/B%C3%A1nh_ch%C6%B0ng 料理教室で習ったことがあるけれど、なかなかコツがいる。 でも、おばちゃんたちの手つきは鮮やかで、器用にお米を包んでいく様子は、 日本で海苔巻きを難なく巻いていく手つきに近いかな〜。 包まれたバインチュンは、弱火で半日ほど煮込まれる。 火を絶やさず、家族で見守る。

夜遅く、路地を通ったとき、ちょうどバインチュンを煮込んでいるご家族に遭遇。 鍋の湯気と、家族の声と、年末の夜。

⚫️路地裏で、大釜の中で煮えるバインチュン 年越しって、テレビのイベントじゃなくて、こういう“火”の時間なんだなと思った。 日本でいえば、おせち料理を手伝わされる子ども、という感じだろうか。 年始の準備を家族で一緒にする。 そういう時間が、街の底に流れている。 夫も仕事納めとなり、家で少しゆっくりと。 私たちは年末年始に海外旅行に行く予定なので、 私はお世話になった方々へ、ちょっとだけ早いお年玉配りをした。

⚫️ポチ袋、足りなくなって買おうとしたら、スーパーで乳製品メーカーの ものをもらえてラッキー かわいい! 今年お世話になったレストランのスタッフたちにも。 だって本当に美味しいものを提供してくれて、心地よいサービスをしてくれるから。 ほんの気持ちの金額なのに、渡したときの反応ったらすごくて〜 嬉しさ大爆発。 「えっ、私に?」「本当に?」という顔をして、両手で受け取ってくれる。 あの、そんなに入ってないんだけど…と恐縮するくらい。 でもきっと、金額じゃないのだと思う。 外国人の私たちからもらえるとは思っていなかった、という驚き。

⚫️満面の笑顔〜来年もよろしくお願いします〜〜 こうして眺めていると、ベトナムの年末年始は、日本のそれとは少し違う。 日本は祝日が多い。年末は特別だけれど、寒さもあって、どこか静かに整っていく感じがある。 でもベトナムは違う。 祝日が少ない国だからこそ、唯一の長期休暇に熱量が一点集中する。 一年分の「休む」「帰る」「祝う」「贈る」が、この時期に爆発する。 だから街がわさわさしている。 だから人が浮き足立つ。 だから市場もヒートアップ。 ホーチミンの静けさと、市場の熱気と、路地裏のひっそり鍋の火。 年末は暦じゃなく、人の手と匂いでできている。 ひっそりしたホーチミンから、乾杯のコールはこれから始まる。 この国の“わさわさ”が、他人事ではなくなってきたかな。 移住生活ランキング
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