欲しいものは、作ればいい。〜ホーチミンで額縁をこしらえる〜
ホーチミンで暮らしていると、日本との違い、 つくづく思うことがある。 この街には、何でも作る人がいる。 洋服を直す人。 家具を作る人。 看板を作る人。 そして、額縁を作る人もいる。 先日、雑貨屋さんで ノートと共に、かわいいポスターを見つけた。

ホーチミン市の区を色と柄で表現したデザインで、 見れば見るほど楽しい。 自宅用に一枚買ったところ、夫も気に入った。 「オフィスにも飾りたいな」 そんな一言で、もう一枚購入することになった。 さて、ここで日本なら・・・ まずはサイズを測り、雑貨店やホームセンターで額縁を探す。 合うものがなければネットで注文する。 こだわりの作品なら、高いのを承知で額縁屋さんへ行く。 そんな流れが普通だと思う。 ところがベトナムでは少し違う。 「額縁屋さんに持っていけばいいから〜」 向かったのはローカル色たっぷりの小さな店だった。

店先には額装された絵画や写真。

奥には工房。 木材の端材が積まれ、切断機が置かれ、 壁には何十種類もの額縁サンプルが並んでいる。

きらびやかな金色。 落ち着いた木目調。 モダンな黒。 細いものから重厚なものまで実にさまざま。 どれにしようか。あれこれ眺める。 服を選ぶような感覚とも少し違う。 額縁を選ぶというより、 作品の見せ方を選ぶ感覚だろうか。 あと飾る場所の、壁の色。 照明の色。他の装飾品の色、大きさ、などなど。 ポスターの色を生かしたかったので、 最終的には濃紺を基調にしたシンプルなフレームにした。 引き締まった感じ。 職人さんは慣れた手つきでサイズを測り、 「明日取りに来て」 と言った。

オーダーメイドなのに明日。 このスピード感もベトナムらしい。 翌日訪ねると、本当に完成していた。 ガラスが入り、裏板が付き、 吊り下げ金具まで取り付けられている。 額に入った瞬間、ただの紙だったポスターが作品になった。 不思議なものである。 中身は同じなのに、見え方がまるで違う。 部屋に飾りたくなるし、人にも見せたくなる。 額縁には、そんな力があるらしい。

そして驚いたのは値段。 今回の額装代は約6万ドン。 日本円にすると350円ほど。 もちろんサイズやフレームによって変わるが、 それでも驚くほど気軽な価格。 この気軽さ。 ベトナムでは、既製品を探して歩くより、 作ってもらった方が早いことがある。 服もそう。 クッションもそう。 家具もそう。 そして額縁も。 暮らしのすぐそばに職人がいる。 それがこの国の面白さだと思う。 大量生産の製品に囲まれていると忘れがちだが、 物は本来、人の手で作られる。 ホーチミンの路地裏には、 今日もそんな仕事場が息づいている。 木を切る音がして、ガラスをはめる音がして、 誰かの「これを飾りたい」が形になっていく。

ポスターを見るたびに思う。 この街では、欲しいものは買うだけじゃない。 作ってもらう、という選択肢がちゃんと残っている。 移住生活ランキング
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