ベトナムで、スーツケースを直してみたら
4月中旬、ベトナム中部の旅へ出ることになった。 2泊3日の短い旅なので、飛行機に荷物を預けずに、 手荷物だけで行こうと思ってて そうなると、小さなスーツケースの出番。 ってことで、よっこらしょ! 1年くらい使っていなかったのを取り出した。 ——あら。 車輪のゴムが崩れている。嫌な予感。 触るとポロポロ落ちてくる。 これは……ちょっと無理かもしれない。 ホーチミンの暑さのせいなのでしょう。 ゴムとかプラスチックって、こういうことになります。 加水分解、だったかな、たしか。 夫は「回るから大丈夫でしょ」なんて言うけれど、 いやいや、それで使い続けたら、今度は本体がやられるでしょうに。 どうしようかな、と少し考えてみる。 ——これ、直せるんじゃない? 短時間で… 日本だと、予約して何日間かお店に預けて修理するか、 あとは諦めて買い替えか。 簡単には捨てません。 思入れのあるスーツケースです。 そして何よりここはベトナム。 壊れたものを、そのままにしない国です。 気づけば、捨てたものを、誰かが拾って直したり、ダメなら分解し、 使える部品だけ分別して売ったりしてる。 もったいないからなのか、お金になるからなのか、 どちらにしても今でいうSDGsみたいなことを当たり前にやっている。 洋服も、靴のお直しも実に手軽で、 ものによってはその日のうちに直ってしまうこともある。 ミシンがない私にとっては多少雑でも安く、すぐ直してくれるのが嬉しい。 だったら、スーツケースも治してくれるところは絶対にある。 あるはず… 夫は「まあ、今回は無理しなくてもいいんじゃない?」と言う。 直せないかもしれないし、 持っていっても相手にしてもらえないかもしれない。 ぼったくられるかもしれないよ。 そもそも対応してくれないかもしれないしね… そういうことも、たしかにある。 海外で何かを頼む、というのは、簡単にはいかない場合が多い。 言葉、認識の違い、きちんとしたお店ならともかく、 ローカルの修理屋さんに出そうとしてる私。 ちょっとした賭けみたいなところがある。 でも、それが海外で暮らす楽しみになっているのも事実。 そして——なんとなく、夫の物言に、少しだけ引っかかってるのよね。 「まあ無理でしょ」という空気。 こちらの限界を、先に決められているような感じ。 ……いやいや、やってみないと、わからないでしょう。 半分は意地かもしれない。 でももう半分は、「できるかもしれない」という ハードルを超えてみたい、期待の気持ち。 朝のうちに動いて、 午前中でダメなら今回は諦めよう。 そんなふうに、自分の中でルールを決めた。 調べてみると、バイクで20分ほどの場所に修理屋はあった。 ただホームページはあるけれど、電話はつながらないし、メールも返ってこない。 ……かなり不安。 でもローカルではよくあることなので、と言い聞かせ行ってみないとわからない。 だめなら、そのとき考えよう。 スーツケースを足元に乗せて、バイクで出発〜。 とにかく事故らないように安全第一の運転です。 渋滞地区をなんとか通り抜け、 橋をふたつ越えて、ローカルなエリアに入っていく。 見渡せば、ちょっといい感じの町並みなんだけど、 お店はなかなか見つからない。 住所を手掛かりに、看板をひとつひとつ見ながら進んで、 ようやく、それらしき場所にたどり着いた。 入り口は開いているのに、工場らしきものは見えない。 あれ……ここで合ってる? 少しだけためらって、中をのぞくと、 店の人がこちらに気づいて、スーツケースを見て「OK、OK」と笑った。

【事務所兼、商品置き場兼、作業場】 奥を見ると、スーツケース棚があって、修理を終えたらしいものが置かれていた。 その横に、ひっそり修理スペース。 部品箱がびっしり並んでいる。 ——確かに、ここで直している。 車輪を見せると、またにこやかに「OK」。 念のため値段を聞くと、4輪交換で50万ドン。 日本円で3000円くらい。 相場通り。 ぼったくられないように事前にネットで情報をゲットしておいたので ひとまず安心して、そのままお願いすることにした。 「すぐできるよ〜」と言われて、ソファーへ。 1時間くらいかかるかな? と思ってて 近くのカフェに行こうかなとしたけれど、すぐっていうし… (ベトナムの時間感覚は日本と違って長いけど) せっかくだから、作業を見ておこう。 めちゃめちゃにされた場合、言いくるめられないように (多分負ける…) 修理はあっという間だった。

【半畳ほどのスペースで直す名人】 しかも、見ていて気持ちいいくらいの手際の良さ。 ちゃっちゃと部品を選んだら、工具を使って、パシパシパシパシ〜 火花を散らして車輪4つをあっという間に取り外したら、 ドリルみたいなのに、ボトルをギュイ〜ンギュイ〜ンして取り付け。 無駄な動きがまったくない。たぶん、5分くらいで終わった。 お見事でした。 「ほら」と差し出されたスーツケースを転がしてみると、 ——軽い。しかも静か。 音は多少うるさくてもいいや、と思っていたけど 予想以上に、滑らかで、すぅーっと流れて行く。

「感動〜」思わず、ちょっと声が出た。 支払いはQRコードであっけなく終了。 こんなに簡単でいいのかな、と思うくらい。 連絡がつかなくて、少し不安だった時間も、 なんだかもう、どうでもよくなっていた。 そのあとに来たお客さんは、引っかかる、ここが、ここが! と ハンドルの修理を頼んでいた。 なるほど、ハンドルも取り替えてくれるのね。 よくみると、リモア、サムソナイト・・・メーカーの修理もやってるようで。 ちょうど鍵の調子が悪くて少し気になってる、リモアのスーツケースも、 そのうち持ってこようかな、と。 正規店で直すより時間も値段もお得よね。 (壊れたら壊れたで仕方ないけど) やり遂げた感で、ちょっと気持ちが軽くなってて、 バイクでトコトコ走るも晴れやか。 ベトナムの道路って一方通行が多い。 道もろくに覚えていないので 中心地へ戻るために渡る道路、橋越えのルートになかなか入れない。 あれ、ここじゃない。 あ、また違う。 気づいたら、同じ道をぐるぐるぐるぐる。 ——またここ走ってるよ、あたしったら、やんなっちゃう〜 ただ風切って走ってる私は、なんだかご機嫌で、 そのまま、くるくる回りながら、頬と口元は緩みっぱなし。 日本だと、ここまで気軽に「直す」という選択、今はないかもね。 もちろん、当たり外れはあると思うけれど、 今回のお店は、たぶん当たり。 こういう小さな成功体験(奇跡だとしても)が、 なんだかちょっと嬉しい。 帰宅した夫に涼しい顔で「直ったよ〜」と見せたら。 おお〜すごい、そんな遠くまで行ったの?! と感心してくれたので、気分よく、 えっへん! どうだと、という顔でちょっとだけ顎を突き出してみた。 ■今回スーツケースを修理したお店 Relug Luggage Repair Center 📍Google Map: https://maps.app.goo.gl/VLueV8y4oNixvVeG7 ・スーツケース修理専門 ・キャスター交換対応 ・QR支払い可 ※4輪交換 約50万ドン(約3000円) ※作業時間 約5分 移住生活ランキング
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