雨の予報は、木にぶら下がっている
雨季のホーチミン。 朝から病院へ行き、用事を終えて外に出る。 空は少し曇ってはいるけれど、まだ、大丈夫かな。 そう思って歩き出したところで、見つけた。

街路樹にぶら下がる、青、緑、ピンク、紫。 カラフルなビニールのバイク用カッパです。 突然のスコールにバイカーが慌てて買う時がある。 ペラッペラのビニル製品だけど、1枚あるだけで助かるやつ。 ホーチミンで暮らしていると、 これがちょっとした天気予報になる。 道端にカッパ売りが現れたら、 そろそろ、降りますよ。 街からの雨マークである。 でも、この時はまだ降っていなくて、 なんとか逃げ切れるかな〜という希望を抱きつつ 店探しをしていた。 そう私は、モーレツにお腹がぺこっぺこだったのです! 立ち寄ったのは、鶏おこわの店。 ベトナム語では「Xôi gà(ゾイガー)」。

店先には、大きな鍋いっぱいのもち米。 その隣には、ほぐした鶏肉、ソーセージ、 うずらの卵や内臓を煮込んだモツ部位などなど。 注文が入るたびに、店員さんの手が休みなく動く。 もち米をプラスチック皿でよそって、 具をのせ、タレをかけ、口直しの大根人参なますを入れて 蓋をする。

その手際を見ているだけでも楽しい。 ミシュランガイドにも掲載された店だからか、外国人観光客も多い。 店先に唯一ある、小さな店内のテーブルは満席。 ならば、いつものようにテイクアウトして、どこかのカフェで食べよう。 そう思って、ゾイガーを片手に歩き出した。 ところが最近、ホーチミンのカフェは、 食べ物の持ち込み禁止の店も増えた。 特に観光客の多いエリアでは、以前のように、飲み物さえ頼めば 堂々と持ち込みできた。 でも今は、飲食禁止のイラストがドアや壁に貼られてて その自由が、少しずつ通用しなくなってきた。 文化の変わり目に立ってます。 仕方がないからゾイガーを持ったまま、ぷらぷら歩く。 ぽつり。 ぽつり。 やっぱり来た〜。 さっきのカラフルなカッパたちは、正しかった。 雨脚が強くなってきた頃、歩道の前を一台の荷車がふさぐ。 バナナ屋さん!

雨を避けるように、車ごと歩道に乗り上げている。 ちょうど近所のおばさんらしき人が買いに来て、 店主と何やら話している。 二人ともよく笑ってて、 雨宿りなのか、買い物なのか、世間話なのか。 その境目がよくわからない。 なんだかいい光景で、私までバナナを買いそうになった。 いや、違う。 私は今、お腹が空いているのだ。 しかも手には、まだ食べていないゾイガーがある。 バナナを買っている場合ではない。 そして雨はいよいよ本降りに。 もう、だめー。 目についたカフェへ駆け込んだ。 持ち込みを断られたら、その時考えよう でも、ここは大丈夫そう。 周りも、ナッツやバインミーの袋を堂々とテーブルの上に広げてる。 最近ブームの花茶(砂糖なし)をひとつ頼んで、 ようやくゾイガーの蓋を開ける。

あちこち歩いてたから冷えたかな、と思いきや 発泡スチロール容器なので、まだホクホク。 もち米の上には、ほぐした鶏肉がたっぷり。 今回は、内臓卵の煮込みもプラスしたから、40000VND=240円位。 フライドオニオンの香ばしさ。 そして、思った以上にたくさん入ってる、なます。 もち米と肉で重くなりそうなところを、 この酸味がちょうどよく軽くしてくれる。 お腹が空いていたこともあるけれど、かなりの満足感。 外では、雨が降り続いている。 病院帰りに、おこわを買った。 食べる場所を探して歩いた。 途中でバナナ屋さんに道をふさがれた。 たまたま入ったカフェで昼ごはんをしながら、 次の目的地への道筋を考える。 雨はまだ止みそうにもない。 たったそれだけの午後。 雨季のホーチミンは、 目的地までまっすぐ歩かせてくれない。 その寄り道が、案外おもしろい。 移住生活ランキング
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